ところで小学生の保護者の皆さんは、ご自身の体験のなかで、『学習指導要領』というものを意識したことがあるでしょうか?

それは、戦後の学校教育制度が確立して以来、ほぼ10年に一度、改訂・告示されてきた、公立学校の教育における学習指導のガイドラインといえるものです。

●「ゆとり路線」がもたらした学校教育のスリム化
戦後、改訂ごとにレベルアップしてきた『学習指導要領』は、なかでも最高水準といわれた1970年代の「現代化カリキュラム」を境に、その後は「ゆとりのカリキュラム」へと、いわば“スリム化”の一途を辿ります。これに対し、私立中高一貫校の多くは、以前の「現代化カリキュラム」の水準をその後も維持しつつ、自校の教育カリキュラムを独自に工夫・発展させていきました。
その影響が出始めた1980年代の後半から、各都道府県の公立高校の大学進学実績が全体に下降に向かい、代わって多くの私立中高一貫校が、年ごとにその実績を伸ばしてきました。

そして2002年には、「学校5日制」の全面実施ともない、現代の教育の歴史上、最もスリムな、現行の『学習指導要領』が導入されました。台形の面積や、円周率の「3.14」が小学校の教科書から姿を消し、分数の割り算や、小数点以下第二位の計算が除外されたのもこのときです。
さすがにこのときには、多くの教育関係者や保護者の間で、公立学校における「学力レベルダウン」を危惧する意見が叫ばれ、文部科学省は後にその方針を転換せざるを得ないことになりました。

●「教育の自由化」は私学がリードする!
そしてその後、文部科学省は、現行の『学習指導要領』について、学校教育における上限規制(アッパーリミット)ではなく、少なくともこれだけは学ぶという最低水準(ミニマムスタンダード)を定めたものに過ぎないという、これまでにはなかった解釈を示しました。これによって戦後初めて、公立学校でも「教育の自由化」が謳われ、事実上、各学校や自治体ごとの教育の工夫を具体的に打ち出すことが可能になりました。

そして、そうした変遷の延長上に、中学校では2012年から、新たな『学習指導要領』が導入され、そこでは新しい教科書のボリュームアップを例に、公立学校の教育でも一転して“脱ゆとり”が打ち出されています。しかし、約30年にも及ぶ、「ゆとり教育」のもとで、かつての「学校できちんと勉強していれば、高校・大学に進学(=合格)できる」という常識は、もはや公立学校ではいったん崩れてしまいました。

そうした現在、これからの社会で求められる十分な学力を身につけると同時に、豊かな人間力を育てていくには、親が自らの責任と判断で、「わが子を通わせる学校を選ぶ」ことが必要不可欠な時代になりました。

多くの私立中高一貫校の教育の多面的な成果は、大学進学実績も含めて、まだそうした公立トップ高や公立中高一貫校を、もはや大きくリードしているといってもよいはずです。そうした構造の変化もしっかりと見極めて、わが子の進路を選択することが、ますます重要な時代になっているのです。

(弊社代表/北 一成)