もうひとつ重要なことに目を向けると、もともと近代の学校教育制度の開始時期に、中学校までの義務教育を終了して社会に出ることを前提に考えられた『学習指導要領』は、教育の世界でいう「完成教育」という考え方で作られたものであり、現代のように、多くの子どもたちが、高校、大学へと進むことを前提とした、いわゆる「進学準備教育」に即したものではありませんでした。

したがって、高校への進学率がほぼ100%に近づき、大学進学率も50%を超えた現在では、公立学校における「学習指導要領」のあり方そのものが、現情やニーズに即したものとはいえなくなっています。

一方で、私立中高一貫校のほとんどは、卒業後は大学や大学院に進学することを前提とした「進学準備教育」の考え方のもので、中高6年間のカリキュラムを独自に工夫・再編して、効率的で、しかも体系的、有機的なつながりを持った学習指導を実現してきました。

それゆえ多くの私立中高一貫校は、先の「現代化カリキュラム」の学力水準の維持にこだわり、なるべく授業時間数を減らさずに「学習の量」も保ち、独自に作成したテキストや副教材、プリントなどで効率的な学習スタイルを作り上げてきました。

さらに「学習の量」だけではなく、最近のPISA(OECD学習到達度調査)で好成績を挙げるフィンランドの教育に象徴されるような、自分で考え、表現する力などを育てる「学習の質」の面でも、研究論文の作成や体験学習など、新たな学びのスタイルを工夫することで、公立学校をリードする内容や指導ノウハウを作り上げてきました。
そして、そうした自由な教育の工夫の差が、過去30年以上にわたって、大学進学実績の面でも、公私間の格差を拡大してきたことは、すでに多くの教育関係者の認める事実です。

中・高の『学習指導要領』における重複や順序を、中高一貫校ならではの継続性、一貫性を生かして効率的に整理・再編し、それによって生まれた時間的なゆとりを、「深く考え」、「自ら調べ、」、「体験し」、「表現・共有する」ことなどに振り向けて、自由に工夫されたものが、私立中高一貫校の独自のカリキュラムだということができるはずです。

そうした私立中高一貫校の自由な教育のもとで、わが子が育んでいく骨太でかつ柔軟な力こそが、中学受験で得られる無形の価値といえるでしょう。

(日本Web情報出版代表/北 一成)